名古屋でAIシステム開発の会社をやっています。チームみらいの永田町エンジニアチームが公開している「みらい議会」を見て、当社の国会のサイト(愛知の国会議員 発言ログ)に、法案のページを足しました。
国会に出された法案・予算・条約741件(第211回国会〜いまの第222回国会)について、提出から公布までの経過、その法案に触れた国会の質疑と政府の答弁、参議院の会派別の賛否、そして「いま審査している委員会の委員」までを1ページにつないでいます。
この記事では、みらい議会の何を参考にし、どこを変えたか、作るときに何につまずいたかを書きます。
チームみらいの「みらい議会」とは
チームみらいは、党首の安野貴博氏が2025年5月に結党した政党で、政党交付金を使って「永田町エンジニアチーム」をつくり、国民や他の政党・行政が使えるツールをオープンソースで作ると公表しています。その2本目のプロダクトが、2025年10月に発表された「みらい議会」です。
みらい議会は、いま国会で審議されている法案を、分野ごとに分かりやすく伝えるサイトです。法案ごとに説明が書かれ、「AIインタビュー」で読んだ人の意見を集めて、論点を分析しています。ソースコードは GitHub で AGPL-3.0 で公開されていて、法案と説明は管理画面から登録する作りになっていました。
なお、意見をAIで集めて整理する「広聴AI」は、チームみらいではなく、デジタル民主主義2030(DD2030)というコミュニティが開発しているオープンソースです。DD2030 は安野氏が2025年1月に立ち上げ、安野氏は結党の際に政治的中立のためボードを退いています。チームみらいは広聴AIを使う側です。この関係は前の記事にも書きました。
何を参考にし、どこを変えたか
参考にしたのは、「法案」を単位にしてページを作るという考え方です。当社のサイトは、議員ごと・話題ごとに国会の発言を並べるところまではできていましたが、「この法案はいまどうなっていて、国会で何が言われたのか」を1か所で見る場所がありませんでした。
一方で、みらい議会と同じものを作っても意味がありません。そこで、見る方向を変えました。
- みらい議会:いまの法案を、人が分かりやすく書いて、意見を集める(これからの議論)
- 当社の法案ページ:その法案が、過去のどの質疑・答弁・質問主意書とつながっているかを、データから自動で並べる(これまでの議論と、声の届け先)
コードは使っていません。みらい議会は AGPL-3.0 なので、取り込むと当社の側にも公開の義務が出ます。参考にしたのは考え方だけで、PHP と SQLite で自前で書いています。
作ったもの(3つ)
1. 審議の経過と、国会での議論をつなぐ
法案ごとのページに、次を並べています。例として建築物省エネ法の改正を見てください。
- 審議の経過:提出、委員会、本会議、公布の日付(衆参両方)
- 参議院本会議の会派別の賛否(押しボタン式で採決したもの):214件
- 政府の答弁と議員の質疑:法案の名前がそのまま出てくる発言を、前後をそのまま抜いて会議録へリンク。628件の法案で、質疑5,692件・答弁1,101件がつながりました
- 関係する質問主意書の件数:421件。当社の質問主意書アシストへつなぎます
- 関係する国会トラッカー(話題ごとに国会の質疑と答弁を追うページ)。逆に、トラッカーの側にも「この話題に関係する法案」を出しています
2. 「この法案で変わること」を3行で
法案ごとに、何が変わるかを3行でまとめています。例は入管法の改正です。
- 元にするのは、参議院の「議案要旨」だけ。要旨が無い法案は、法律案の本文の末尾にある「理由」を使います
- 作るのは当社のサーバーの生成AI(gemma4)で、外部のAIには送りません
- 載せる前に検査します。元の文に無い数字がある(漢数字も直して比べます)、評価や賛否・政党名を書いている、「この法律案を提出する」のような中身の無い行がある——のどれかに当たったら載せません
- ページには「AIによる要約」と明記し、元の文書(PDF)へのリンクを必ず付けています
10月6日の時点で530件が検査を通り、8件を載せない判定にしています(残りの法案も順に作っています)。
3. 「この法案に声を届けるには」
みらい議会の AIインタビューにあたる部分は、作りませんでした。企業が法案の賛否を集めると偏って見えやすく、組織的に票を入れられたときの対策も要るためです。
代わりに、いまの国会で審査中の法案に、「誰が審査していて、どこへどう届ければいいか」を事実だけで出しています。例は政治資金規正法の改正案です。
- 付託された委員会の委員:委員長と理事、会派ごとの人数、委員の全員(衆参の委員名簿を毎日取り込みます。衆議院24委員会・807人、参議院17委員会・412人)
- 愛知の議員でその委員会の委員の人(この法案では5人)
- 国会への請願の方法:紹介議員が要ることと、衆参の公式の手続ページ
- 意見が大きく割れている話題(消費税の減税など)だけ、当社の合意点マップへ
いまの国会で委員会で審査中の法案は、21件あります。
作るときにつまずいたこと
実際に動かして、次の5つに気づいて直しました。
- 同じ名前の法案が、何年も繰り返し出る。 「政治資金規正法の一部を改正する法律案」は毎年のように出るので、名前だけで国会の発言を引くと、別の年の法案の発言が混ざります。その法案が提出されてから、最後の動きの30日後までの発言に限りました。
- 継続審査の法案は、会期ごとに1行ずつある。 元のデータでは、8会期にわたって継続審査になった法案が8行に分かれていました。提出した会期・種類・番号で1件にまとめ、いちばん新しい会期の状態を使っています。
- 委員長の議事進行が、質疑に混ざっていた。 会議録の肩書の欄が空で、本文の頭が「○○委員長 次に、△△君。」の形になっている発言が1,766件ありました。本文の頭で委員長・議長を見分けて除いています。
- いまの国会の法案が、元のデータに無い。 議案の一覧は、smartnews-smri が公開しているデータ(MIT ライセンス)を使っていますが、9月1日の更新で第221回国会までです。それより新しい会期は、参議院の議案情報のページを直接読んでいます。
- 参議院の投票結果のページは、2023年ごろと今とで作りが違う。 両方を読めるようにしました。
データと出典
- 議案の一覧と経過:smartnews-smri/house-of-councillors(MIT)。いまの国会は参議院の議案情報
- 国会の発言:国立国会図書館 国会会議録検索システム
- 会派別の賛否:参議院 本会議投票結果
- 委員の名簿:衆議院・参議院の委員名簿
- 要約やページの文章で、法案の評価や賛否は書いていません
よくある質問
チームみらいの「みらい議会」とはどんなサイトですか?
チームみらいの永田町エンジニアチームが2025年10月に発表した、いま国会で審議されている法案を分野ごとに分かりやすく伝えるサイトです。法案ごとに「AIインタビュー」で意見を集めています。ソースコードは AGPL-3.0 で公開されています。
この法案ページは、みらい議会と何が違いますか?
みらい議会は、いまの法案を人が分かりやすく書いて意見を集めるサイトです。この法案ページは、その法案が過去のどの質疑・答弁・質問主意書とつながっているか、参議院でどの会派が賛成・反対したか、いま誰が審査しているかを、公開データから自動で並べています。意見は集めていません。
広聴AIはチームみらいが作ったものですか?
いいえ。広聴AIは、デジタル民主主義2030(DD2030)というコミュニティが2025年3月にオープンソースで公開したものです。チームみらいは利用する側です。
法案の要約は信用できますか?
要約は当社のサーバーの生成AIが議案要旨などから作ったもので、数字が元の文と合わないものは載せていません。ただ、正確な内容は必ず元の文書で確かめてください。ページには元の文書(PDF)へのリンクを付けています。
自分の会社や団体でも、こうした仕組みを持てますか?
当社は、議会・行政向けのシステムを、議員事務所や自治体が自前のサーバーで持てる形で作っています。Kurage App Store で扱っているほか、業務に合わせて作り変えるバイブカスタマイズや、名古屋市内で月15時間のAI-IT顧問契約もお受けしています。
