株式会社エクスブリッジ
文字起こしAI「Haas-ja-v1.0」とは——日本語の公開モデルで最高精度・Whisperの15倍速。使い方と弱点、AI議事録の自社サーバー版に組み込む計画

文字起こしAI「Haas-ja-v1.0」とは——日本語の公開モデルで最高精度・Whisperの15倍速。使い方と弱点、AI議事録の自社サーバー版に組み込む計画

AI OSS技術解説2026年11月03日約16分で読めますHaas-ja-v1.0

2026年10月に公開された日本語の文字起こしAI「Haas-ja-v1.0」(Apache 2.0)を解説します。公開モデルで最も低い文字誤り率6.12%、Whisper large-v3の15〜17倍の速さという公表値、使い方、NVIDIAのGPUが必須などの弱点、当社のAI議事録システムに組み込む Kurage AI MOM Pro(Haas版)の計画までまとめました。

この記事の答え

Haas-ja-v1.0とは?

Third Intelligenceが公開した、日本語に特化した音声認識モデルです。公開モデルの中で最も誤りが少なく、Whisper large-v3の15〜17倍という高速な処理を実現しています。

日本語に特化した文字起こしAI Haas-ja-v1.0 が、2026年10月に公開されました。GIGAZINE が「オープンモデルの中で最高性能」と紹介し、X でも6万回近く見られています。

当社は、会議の録音を社外に出さずに文字起こしして議事録の下書きを作る買い切り製品 Kurage AI MOM を出しています。文字起こしには、これまで whisper.cpp を使ってきました。Haas-ja-v1.0 は、その置き換えの有力な候補です。この記事では、公開された情報から Haas-ja-v1.0 の中身・使い方・弱点を整理し、当社の製品にどう組み込むかを書きます。

結論を先に書きます。

ここに書く精度と速さの数字は、すべて開発元の公表値です。当社のサーバーではまだ測っていません。

Haas-ja-v1.0 とは

Haas-ja-v1.0 は、Third Intelligence が Hugging Face で公開した日本語の音声認識モデルです。公開は2026年10月8日です。名前は Hear Anything At Speed(何でも速く聞き取る)の頭文字で、ステレオ音響で使われる「ハース効果」の研究者 Helmut Haas にもかけています。

中身は、NVIDIA の音声認識モデル Parakeet-TDT の作りをもとにしています。

全体で6.2億パラメータです。Whisper large-v3(約15億)の半分以下の大きさです。

学習には、約4万6,000時間の音声を使っています。ReazonSpeech・Common Voice・YODAS という公開の日本語音声と、開発元が持っている音声です。評価に使う音声は、学習に一切入れていないと書かれています。

精度:公開モデルで最も誤りが少ない

開発元は、性格の違う5種類の公開音声(合計23.4時間)を集めて、各モデルを比べています。

日本語は、同じ言葉を漢字でもかなでも、数字でも漢数字でも書けます。そこで、表記をそろえてから「文字誤り率」を出しています。いちばん厳しい数え方(漢字とかなの違いも誤りに数える)で、Haas-ja-v1.0 は 6.12% でした。評価した公開モデルの中で最も低い値です。

有料の API と比べると、次のようになっています。

つまり「いちばん正確な有料APIには届かないが、公開モデルの中では最も良く、有料APIの一部と並ぶ」という位置です。

速さ:Whisper large-v3 の15〜17倍

速さは「1秒間に何秒分の音声を文字にできるか」で比べています。Haas-ja-v1.0 は 約3,236倍 で、次に正確な公開モデル(NVIDIA の Nemotron 3.5 Transcribe と Whisper large-v3)の15〜17倍の速さです。

ただし、この数字は NVIDIA H200 という最上位のデータセンター向け GPU で、512本の音声をまとめて処理したとき のものです。中小企業の社内サーバーで会議の録音を1本ずつ処理するときは、この数字にはなりません。あくまで「同じ条件で比べると、Whisper よりずっと速い」という読み方をしてください。

開発元は、1時間の音声を約0.003〜0.004ドルで文字にできるとも試算しています。こちらも、H200 をずっと動かし続けたときの計算です。

参考までに、当社が9月に whisper.cpp を GPU 無しで測ったときは、47.4秒の音声に27.1秒かかりました(音声の長さの0.57倍)。この比率なら、1時間の会議で約34分です。

使い方

公式の手順は、Linux・NVIDIA の GPU・Python 3.11 以上・NeMo 2.7 が前提です。

  1. 推論用のパッケージを入れる
pip install "haas-asr @ git+https://github.com/third-intelligence/Haas-ASR.git"
  1. 文字起こしする(30秒以内の短い音声)
import haas_asr

model = haas_asr.load_model("third-intelligence/Haas-ja-v1.0")
audio = haas_asr.load_audio("example.wav")   # WAV・FLAC・MP3・OGG。16kHz・モノラルに自動で直す
output = model.transcribe([audio])
print(output[0].text)
  1. 会議の録音のような長い音声は、transcribe_longform を使う
audio = haas_asr.load_audio("meeting.flac")
text = haas_asr.transcribe_longform(model, audio, batch_size=64)

音量から静かなところを見つけて区切り、区切った断片をまとめて処理します。

社名・人名を登録する

議事録でいちばん困るのは、社名・人名・社内の言葉の誤変換です。Haas-ja-v1.0 では、書き方と読みを登録できます。

vocabulary = haas_asr.Vocabulary(
    {"エクスブリッジ": ["えくすぶりっじ"], "kaimom": ["かいもむ"]}
)
text = haas_asr.transcribe_longform(model, audio, vocabulary=vocabulary)

登録した読みを、認識の途中で出やすくします。そして、見つかったところを登録した書き方に置き換えます。登録した言葉が出てこないところまで書き換えてしまわないように、登録なしでも一度認識し、登録した言葉がまるごと入るところだけを採用する作りになっています。処理時間は約1.3倍になります。

話している人を分ける

Haas-ja-v1.0 だけでは、「だれが話したか」は分かりません。NVIDIA の話者分離モデル Nemotron-3-Diarization と組み合わせると、話者のラベル付きで出せます。組み合わせ方の見本は、開発元のリポジトリにあります。

弱点と、使う前に確かめること

whisper.cpp との違い

動く場所

速さ

精度

言葉の登録

言語

当社の製品にどう組み込むか:Kurage AI MOM Pro(Haas版)

Kurage AI MOM は、次の流れの議事録システムです。

  1. 会議の録音を上げる
  2. 同じサーバーの中で文字起こしする
  3. AI が議事録の下書き(概要・決定事項・ToDo・課題・次回)を作る
  4. 人が録音・全文と見比べて直し、承認したものだけが議事録になる

いちばんの売りは、録音を外のクラウドサービスに送らないこと です。対面の会議や IC レコーダーの録音を、社内の決まりで外に出せない会社に向けています。いまは whisper.cpp を使っていて、GPU の無いサーバーでも動きます(税込55,000円)。

ここに Haas-ja-v1.0 を入れた版を Kurage AI MOM Pro(Haas版) として、税別220,000円で出す予定 です。GPU のあるサーバーをお持ちの会社や、これから用意する会社に向けた版です。

GPU の無いサーバーで使う会社には、これまでどおり whisper.cpp 版をおすすめします。どちらの版が合うかは、会議の長さ・本数・お持ちのサーバーで変わります。

Pro 版について知りたい方、自社の録音で試してから決めたい方は、お問い合わせからご連絡ください。いまの版は Kurage App Store にあります。

参考

よくある質問

Haas-ja-v1.0のライセンスはどうなっていますか?

Apache 2.0です。商用利用や製品への組み込みが可能です。

このモデルを動かすために必要な環境はありますか?

NVIDIAのGPUが必須です。CPUのみのサーバーやMacでは動作しません。

社名や人名の誤変換を防ぐことはできますか?

はい、書き方と読みを登録する機能があります。登録した言葉が出てこないところまで書き換えない仕組みになっています。

この記事の業務を、自社の仕組みにするなら

業種・業務ごとに、オープンソースを土台に社内で回す進め方と費用をまとめています。

前後の記事

読んで、自分でやるか任せるか

記事のとおりに進めて詰まったら、そこから先は任せてください。名古屋の会社です。概算見積は無料です。

開発会社・IT販売の方へ

この記事に出てくるシステムは、御社の案件で売ったり、御社の製品に組み込んだりできます。ソースコードは MIT ライセンスで、御社のブランドでの販売もできます。販売手数料は、バイブプロトタイプ制作・バイブOSSで1件9万円(税別)、App Store の製品は本体価格の10%です。登録無料・ノルマなし。

Kurage.AIKurage.AI に相談AIが何でも答えます