名古屋でAIシステムの開発をしている小嶋です。
当社のサイトには「budibase 日本語」「オープンソース ローコード」「ワークフロー oss」といった検索で来る人がいます。案件の社内承認や備品の貸出、各種の申請を、紙やメールや Excel の回覧で回していて、誰の承認で止まっているか分からない、差し戻しの理由がどこにも残らない。そういう困りごとを、自社のサーバーで動く仕組みで片付けたい人の言葉だと受け取っています。Budibase は表を作って、その上に社員が使う画面を組み立てられる道具なので、申請と承認の流れを実際に組んで、日本の会社で使える形になるかを確かめました。
結論:社員の画面は日本語で組める。承認・差戻しも画面とボタンの動きで作れた
対象は Budibase v3.50.0 の公式の単一コンテナ版です。表をみんなで直接さわる道具というより、表の上に「一覧 → 詳細 → 入力フォーム → 承認」の画面を作る道具です。2026年11月5日に立てて、顧客・案件・備品の台帳と承認記録の4つの表を作り、12画面のアプリを組んで、管理者・申請者・承認者の3つのアカウントでブラウザから操作しました。
| 確かめたこと | 結果 |
|---|---|
| 起動 | docker compose up から API が応答するまで初回 48秒、再起動 48〜50秒 |
| 台帳4つを作る | スクリプトで1秒前後 |
| 12画面・メニュー・役割・表の権限を作る | スクリプトで3〜5秒。公開(Publish)は 0.3〜0.5秒 |
| 申請 → 承認 → 差戻し → 再申請 | 実機で通った。承認記録に申請2・承認1・差戻し1の4行 |
| 作る人の画面の日本語 | 無い(言語の切り替えも言語ファイルも無い) |
| 社員が見る画面の日本語 | 作り手が書く文言は日本語にでき、12画面すべて日本語で表示。ログイン画面などは英語のまま |
| 行の追加 → Webhook が届くまで | 4.3秒 |
| バックアップと復元 | 別の名前・別のポートへ 48〜50秒で戻し、行数・画面12・利用者・自動化・接続が元と一致 |
| 待機時のメモリ | 3.2〜3.4GB |
メモリは思ったより使います。中に CouchDB、MinIO、Redis、AI 機能用の LiteLLM までが入っていて、LiteLLM だけで 0.89GB ありました。AI 機能を使わなくても止められないので、サーバーは 8GB 以上を用意してください。
承認の流れを実機で通した
画面は一覧・詳細・入力フォーム・承認の4種類の型で、顧客・案件・備品の台帳にそれぞれ付けて12画面です。案件の詳細には「承認を申請」のボタンがあり、承認者にだけ「承認待ちの案件」と「承認記録」のメニューが見えます。
申請者が案件 P-0001 で「承認を申請」を押すと、「承認を申請しました」と通知が出て、案件の行に承認状態=申請中・申請者・申請日時が入り、承認記録に「申請」の1行が残りました。申請後はボタンが消えます。申請者が承認待ちの画面の URL を直接打ち込んでも、承認の画面は出ずに案件台帳の一覧に戻されました。

承認者が承認待ちから P-0001 を開くと、案件の項目はすべて灰色の読むだけの欄で、書けるのは差戻し理由だけです。「承認」を押すと、案件の承認状態が承認になり、承認者と承認日時が入り、承認記録に1行増えます。案件名や金額などほかの列はそのままでした。

差戻しは、理由が空のまま押すと何も起きないように作りました。ボタンの動きの最初に「理由が空なら止める」を置いています。理由に「見積の金額の根拠を添付してください。」と書いて押すと、案件と承認記録の両方に理由が残り、申請者の詳細の画面でその理由が読めて、「承認を申請」をもう一度押せるようになりました。

無料のプランでの承認の作りには限界もあり、手順書にそのまま書きました。承認状態を書き換えられるのは画面のボタンだけではなく、表の書く権限を持つ人は API などから直接書けます。行や列ごとの権限は有料のプランの機能です。申請者の詳細の画面では承認の列を読むだけにしてありますが、厳密な職務分離が要る業務では、この点を踏まえて設計してください。金額で承認者を変える、2段階で承認する、といった形は作れるはずですが、今回は試していません。
日本語の実態:作る人は英語、社員は日本語
作る画面(ビルダー)と設定には、言語の切り替えがありません。すべて英語です。一方で、社員が使うアプリの見出し・ボタン・項目名・メニュー・通知・入力の案内・必須のメッセージは、作り手が日本語で書けます。作る人のために、ビルダーで毎日見る英語の読み替え表を付けました。
社員の画面で英語が残ったのは、ログイン画面(Log in to Budibase など)、右下の利用者メニュー(My profile・Log out)、画面下の「Made with Budibase」、添付ファイルの欄の案内でした。これを変える Translations の機能は有料のプランで、無料のままでは保存できませんでした(License does not allow translations)。有料のプランに上げたとき用に、その95件の日本語もキットに入れています。
日本語にするには少し工夫が要る所もありました。表の側で必須にした列を空で保存すると「Required」と英語で出るので、表では必須にせず、画面の側で必須にして「案件名を入れてください」と書くと日本語になりました。保存したときの「Row saved」も、既定の通知を止めて「保存しました」を出すようにしています。キットのスクリプトで作る画面には、どちらも最初から入れてあります。
名前に日本語が使えない所もあります。ワークスペースの名前、独自の役割の ID(表示名の「承認者」は日本語にできる)、リンクの逆向きの列の名前、外部 DB の表の名前は英数字にしました。
台帳の取り込みで「3,000,000」が「3」になる
台帳には、全角数字・〒付きの郵便番号・令和の日付・改行の入った住所・先頭が 0 の郵便番号・髙や﨑を入れた8行の Excel を取り込みました。Excel の「CSV(コンマ区切り)」で保存したものは Shift_JIS なので、列の名前も値も全部化けました。列の名前が日本語だと、ビルダーの取り込み画面は全列が Failure になり、ボタンが押せません。
API で入れると、今度は金額の「3,000,000」が何のエラーも出ずに「3」として入りました。カンマの前までが数値として読まれます。全角の「3,000,000」や「令和5年6月1日」の行は 500 で入りません。キットの整形スクリプトと取り込みスクリプトを通すと、8行すべてが日付・金額・郵便番号の先頭の 0・改行・髙・﨑まで正しい型で入りました。
もう一つ戸惑ったのが、作る人が見るデータと社員が使うデータが別に保存される仕組みです。開発の側に8行を入れて公開しても、本番は0行のままでした。取り込みは本番に向けて行います。
踏んだ穴(7つ)
- 公式の構成をそのまま起動すると、本体が18秒ごとに落ち続けた。中の MinIO を呼ぶ部品がリージョンの設定を必要としていた(compose に1行足して、2分で再起動0回に)
- ログインの回数制限は同じ IP から15分に10回で、単一コンテナ版では全員が同じ IP として数えられる。朝のログインで回数を超えると、全員が15分ログインできなくなる。キットでは上限を300に上げてある。復元した直後にも同じ症状が出た(回数がバックアップに入っているため)
- 内部の CouchDB のパスワードが既定の
adminのまま残る。.envで必ず渡す - 招待メールのボタンが
localhostの URL になる。設定画面で Platform URL を入れる - メモリを減らす
DISABLE_THREADING=1を入れると 2.2GB まで下がるが、自動化の中の JavaScript が動かなくなった。使わない - 社内の宛先への Webhook は既定で遮断される。遮断の一覧を compose で書き換えて開けるが、ループバック(127.0.0.0/8)と 169.254.0.0/16 は遮断したまま残す
- 入力の誤りも 500 で返るので、外形監視で API を見ると「止まった」と誤って判定される。監視は稼働状況の URL だけを見る
無料のプランの上限は、実際に当たって応答を確かめました。利用者は37人まで作って上限なし、作り手も無制限ですが、ワークスペースは1つだけです(1つの中にアプリは複数作れました)。利用者のグループ、組み込みの文言の翻訳、メールの文面の変更、ビルダーのアプリのバックアップは有料のプランの機能でした。アプリのバックアップが使えない分、キットではコンテナのデータを丸ごと取るスクリプトを付け、別の場所に戻して本番と開発の行数・画面・自動化・接続・利用者の数が元と一致することを確かめています。
構築キットとして出しました
ここまでの手順書(00〜06)、台帳4つの設計と作成スクリプト、12画面・メニュー・役割・表の権限を一度に作るスクリプト、Excel を整えるスクリプトと日本語の列名の台帳へ取り込むスクリプト、行が追加されたら Webhook とメールを送る自動化の作り方と届いた中身、外部の PostgreSQL・MySQL の接続手順、バックアップと復元のスクリプトを1つにして、Kurage App Store に出しました。
申請・承認アプリ 自社サーバー構築キット(Budibase 日本語導入・運用)
Budibase 全体は GPL v3、出来上がったアプリに入る部品は MPL 2.0、有料機能のコードは Business Source License です。自社の業務アプリを自社のサーバーで動かす使い方は問題ありませんが、有料機能の制限を外す改変はできません。要点を手順書の最初に書いています。
自社の申請・承認の流れ(誰が申請して、誰がどの順で承認するか)を整理するところから手伝ってほしい場合は、業務システムの相談からどうぞ。
よくある質問
社員向けの画面を日本語にできますか?
はい、見出しやボタンなどの文言は日本語で作成可能です。ただし、ログイン画面などは英語のままとなります。
Excelから台帳を取り込む際の注意点はありますか?
CSV形式では文字化けが発生しやすく、API経由でも金額のカンマ前までしか数値として読まれません。整形スクリプトの使用が推奨されます。
無料プランでできることとできないことは何ですか?
利用者は37人まで作成可能ですが、ワークスペースは1つのみです。組み込み文言の翻訳やアプリのバックアップなどは有料機能となります。铵
