名古屋でAIシステムの開発をしている小嶋です。
GMOインターネットの「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスを追いかけていて、ふと思いました。自分は、GMOのサービスを好んで使おうと思ったことが一度もない。
それでも、いまの私は GMO のサービスの利用者です。もともと使っていたサービスが GMO に買収され、あとから「GMO◯◯」という名前になった。その結果として GMO のユーザーになっているだけです。
これは私だけの話なのか。GMO が作って、利用者に選ばれて評価されているサービスはどれなのか。公開されている沿革を見ながら整理しました。
GMO が自分で始めたサービス
GMO(お名前.com を始めた1999年当時の社名はインターキュー、のちにグローバルメディアオンライン)が自分で始めた、名の通ったサービスは多くありません。
- お名前.com(1999年開始): アジアで最初の ICANN 公認のドメイン登録業者として始まり、いまも国内最大級です。ただ、聞こえてくる評判は「安いが、更新や追加サービスの案内メールが多い」というものが中心です。好んで選ぶというより、ドメインを取ろうとして最初に名前を知る場所だから使われている、という面が強いと思います。今回不正アクセスを受けた「お名前.com デスクトップクラウド」も、このブランドです。
- ConoHa(2013年開始): VPS とレンタルサーバーのサービスです。速さと料金で、開発者からの評価は比較的高いです。GMO が自前で作ったサービスのなかでは、いちばん「選ばれて使われている」部類だと思います。
買収やグループ入りで「GMO」の名前になったサービス
一方で、GMO の名前が付いた主なサービスの多くは、もとは別の会社が作ったものです。
- GMOペイメントゲートウェイ: 国内最大級のカード決済の代行会社です。もとは1995年に設立された別の会社で、2004年に GMO の傘下に入り、2005年に今の社名になりました。
- ロリポップ!: 2001年に別の会社が始めた個人向けのレンタルサーバーです。運営していた paperboy&co.(いまの GMOペパボ)が、2004年に GMO の子会社になりました。
- ムームードメイン(2004年)・ヘテムル(2005年): GMOペパボのサービスです。ヘテムルは GMO に入ったあとに始まりましたが、作ったのはペパボの人たちで、長く GMO の色を出さずに運営されてきました。
- GMOグローバルサイン: 海外の電子証明書の会社 GlobalSign を買収したものです。
整理すると、「GMO◯◯」の多くは、すでにその分野で利用者を持っていたサービスを買い、名前をそろえたものです。利用者の側から見れば、選んだのではなく「気づいたら GMO になっていた」という感覚になるのは、自然なことだと思います。
No.1 を買って名前をそろえる、という成長の仕方
GMO は、各分野で「No.1」のサービスを持つことを重んじてきた会社です。そのための主な手段が、買収とグループ入り、そして名前の統一でした。会社を大きくするやり方としては合理的です。利用者の多いサービスを買えば、その利用者ごと手に入るからです。
ただ、この成長の仕方には、利用者の信頼の面で弱いところがあると私は考えています。
- 信頼は借りもの: 利用者が信頼していたのは、もとのサービスと、それを作った人たちです。名前が「GMO◯◯」に変わっても、利用者が GMO を選び直したわけではありません。
- 名前をそろえると、ひとつの事件が全部に響く: 「お名前.com デスクトップクラウド」の件で GMO の名前に傷がつけば、ほかの「GMO◯◯」を使っている人も不安になります。どのサービスが、どの会社の、どの仕組みで動いているのかが、名前からは見分けにくいからです。
- 選ばれる経験が積み上がらない: 買った利用者は、選んだ利用者ほど離れにくいとは限りません。不満があっても、乗り換えが面倒だから残っているだけ、という人も多いはずです。
自前で作って選ばれるところまで育ったのが ConoHa くらいだ、という見方が当たっているなら、GMO の強さは「作る力」より「買って束ねる力」にある、ということになります。
利用者として、中小企業として
利用者の側でできることは、名前ではなく「実際にどの会社が、どの仕組みで運営しているか」を見ることだと思います。同じ「GMO」の名前でも、もとの会社や運営の体制はサービスごとに違います。何か起きたときに、自分の使っているサービスが関係するのかを、自分で確かめられるようにしておくことです。
そして、私たちのような小さな会社にとっての教訓は、逆の側にあります。私たちには、利用者ごと会社を買う力はありません。だからこそ、利用者に選んでもらえるものを作るしかない。デモを触ってもらい、納得してから使ってもらう。遠回りに見えますが、借りものではない信頼は、そこからしか積み上がらないと考えています。
この記事は、公開されている沿革(各社の有価証券報告書や発表)をもとにした私の見立てです。満足度の調査のような、裏付けのある順位ではありません。
これまでに書いた GMO の不正アクセスの記事
- お名前.com デスクトップクラウドの不正アクセスと、能動的サイバー防御の要請への違和感 https://exbridge.jp/vibeblog/2026-10-24-onamae-desktop-cloud-fusei-access-nodoteki-cyber-bougyo.html#ref=vibeblog-gmo-hyouban
- GMO の不正アクセスは中小企業にも他人事ではない(自社のホームページが踏み台になる前に) https://exbridge.jp/vibeblog/2026-10-27-gmo-fusei-access-chusho-homepage-fumidai.html#ref=vibeblog-gmo-hyouban
- GMO 不正アクセスと熊谷代表の「能動的サイバー防御」 https://exbridge.jp/vibeblog/2026-10-31-gmo-kumagai-nodoteki-cyber-bougyo-ensyutsu.html#ref=vibeblog-gmo-hyouban
よくある質問
GMO が自分で作ったサービスには、どんなものがありますか?
代表的なのは、ドメイン登録の「お名前.com」(1999年開始)と、VPS・レンタルサーバーの「ConoHa」(2013年開始)です。ConoHa は速さと料金で、開発者からの評価が比較的高いサービスです。
GMOペイメントゲートウェイやロリポップは、GMO が作ったサービスですか?
いいえ、もとは別の会社のサービスです。GMOペイメントゲートウェイは1995年設立の別会社が2004年に GMO の傘下に入ったもの、ロリポップ! は2001年に別の会社が始め、運営会社が2004年に GMO の子会社になったものです。
同じ「GMO」の名前なら、仕組みや体制も同じですか?
同じとは限りません。名前はそろえられていますが、もとの会社や運営の体制はサービスごとに違います。何か起きたときは、自分の使っているサービスの運営会社と、発表の対象を確かめるのが確実です。
